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【スーパー連携大学院プログラム CASE.1】 TIS株式会社☓電気通信大学

I Am Worth Loving Wallpaper産業界にある実ニーズを把握でき、研究の貢献可能性がより高まった。
起業を視野に連携を継続していく

電気通信大学大学院情報システム学研究科 情報ネットワークシステム学専攻
中島拓真

多くの経営者の哲学に触れ起業に役立てたいと考えた

博士号を取得した学生が、その後、大学での居場所を見つけられず、希望企業にも就職できない「ポスドク問題」が顕在化して久しい。原因の一つは博士人材の養成と実社会のニーズとの乖離にあるといわれており、いまだ抜本的な対策は見つかっていない。

この問題を解決する取り組みと期待されているのが「スーパー連携大学院」だ。実社会で活躍できる博士人材育成や共同研究の企画・実施などを大学間連携及び産業界などと共同で実施することで、大学の知的基盤としての役割確立や産学官の活動の活性化を促し、日本の経済活動の発展、社会貢献への寄与を目指すプロジェクトである。現在、12大学、35の企業・団体がコンソーシアムに加盟している。

博士前期課程への進学と同時に、スーパー連携大学院のプログラムを受講。イノベーション博士候補のサーティフィケートを取得した後、大手システムインテグレータ企業・TISとの共同研究に参画している。

「スーパー連携大学院のカリキュラムに経営者から企業の志を学ぶプログラムが含まれており、全国の様々な経営者とディスカッションできる点に惹かれて受講を決めました。かねてから起業を志していたこともあり、多くの経営者の哲学に触れることが、将来起業する際に役立つだろうと考えたのです」

博士前期課程を修了した後、中島氏とTISは面談を重ねた末に研究テーマを決定。14年9月に、共同研究をスタートさせた。

研究室だけでは得られない大きな〝学び〟を手に

中島氏とTISの共同研究テーマは、「分散配置されたキャッシュサーバの効率利用によるインターネット通信データ量の削減」だ。

昨今、動画配信サービスの急激な普及による通信トラフィックの増大が、インターネット通信スピードを圧迫している。通信量の増大は再生の遅延や画質の低下を招くため、コンテンツのコピーを保存・再利用する「キャッシュサーバ」が各地に設置されている。そうやって本来のサーバに代わりユーザに配信することでネットワークやサーバの負荷の分散を図っているが、既存の仕組みは効率が悪く、SNSにアップロードされてアクセスが瞬間的に高まる人気動画に対応することが難しい。中島氏が所属する電気通信大学大学院吉永研究室では、「長期的にアクセスされる動画をキャッシュする仕組み」と「短期的にアクセス数が伸びる動画をキャッシュする仕組み」を組み合わせたハイブリッド型のキャッシュサーバを開発。アクセスが急激に増加しても性能を維持することを可能にした。

 中島氏はTISと共に、この仕組みを社内システムに応用することで、クラウドサーバの通信量や負荷を軽減するサービス開発に従事している。それまで企業での勤務経験がほとんどなかった中島氏にとって、TISとの共同研究は大きな刺激になったようだ。

共同研究のメンバーたち。前列は、
電気通信大学大学院情報システム学研究科吉永研究室、
後列はTIS・R&D部門の面々

「よくいわれることですが、教育機関の〝シーズ〟と産業界の〝ニーズ〟にはミスマッチが存在します。当初、大学の研究室の成果とTISさんが求めるレベルにも隔たりがありました。学術レベルではクリアできていたことが、実用化や商用化に際して問題になることは珍しくありません。月に1~2度の定例会議で研究の進捗報告や情報共有を行いつつ、そうしたミスマッチを解消するためのすり合わせや研究の妥当性の検証を繰り返しました。その過程で、産業界の最新のニーズを把握したり、将来のニーズを予測することができ、そのうえで実用に即した研究に取り組むことができました。大学研究室だけでは手にできない、大きな学びが得られたと感じています」

もともと中島氏が大学院へ進んだ背景には、「より高いレベルで社会貢献できる人材になりたい」という強い意志があった。その意味でも、研究者としての実績と産業界への貢献の双方を満たすTISとの共同研究は大きな収穫になったようだ。

「スーパー連携大学院では、何かを強制されるわけではなく、『好きなように学んでいいよ』という環境が与えられるため、様々なことを能動的に吸収したり学んだりしたいと願う好奇心旺盛な学生にとっては大変魅力的なプログラムです。その成果が社会貢献にもつながるわけですから、私にとっては願ったり叶ったりです」と中島氏。

TISにとっても、中島氏との共同研究により、クライアントのコスト削減に寄与するソフトウェア開発及び商用化へのステップが前進するなど、スーパー連携大学院への参加による効果が見え始めている。

そして16年11月、中島氏とTISはこの共同研究の成果を論文で発表。今後もプロジェクトを進化させていく。中島氏は、学位取得後にかねてからの念願だった起業を計画しており、実現した暁には、TISも支援や協業を検討しているという。スーパー連携大学院を契機にスタートした中島氏とTISの関係は、新たな未来に向けて動き出そうとしている。

研究者受け入れ企業の視点

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TIS株式会社 フェロー 戦略技術センター長
油谷実紀 
Miki Yutani
最適な人材との出会いが実現し、
新規事業の“芽”が見つかった

現在、システムインテグレータ業界は大きな転換点を迎えています。従来は、お客さまからの要望に沿うかたちでソフトウェアを開発していました。しかし、あらゆる技術が日進月歩で進歩する現在、将来ニーズを見極めながら、当社から新たな価値を創造・提供していかなければ変化に対応できず、結果、お客さまの要望に応えられなくなるでしょう。
そこで当社では、外部との協業を前提としたオープンイノベーティブな開発スタイルの導入へシフトすることで、変化への対応を図ろうとしています。
数年前に外部との連携や協業を検討し始めた矢先に「スーパー連携大学院」の取り組みを知り、共同研究の機会をいただきました。この取り組みのよい点は、学生の研究内容や志望が明確なため、マッチングが容易なこと。通常の共同研究は、パートナーの模索を含めてスタートまでに長い年月を要しますが、今回はスピーディに着手することができ、双方にとって収穫の多いプロジェクトになったと感じています。

 

 

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