主に科学技術分野や理系の大学、医薬品開発会社、食品・衣類メーカーなどで採用される研究職の年収は、勤労者全体の平均よりも高いとされています。中途採用は求人数が少ない割に人気の職種なので、常に狭き門となっており、転職で年収を上げるには、ニーズの高い専攻分野のスキルや実績、語学力などを上げる必要があります。
本記事では、研究職の年収や中途採用の現状、中途採用で年収を上げるためのポイントなどを解説します。
研究職の平均年収は?
研究職の年収はどのくらいなのでしょうか。最初に、研究職の平均年収と、年収を構成する要素を説明します。
■研究職の平均年収
国税庁の民間給与実態統計調査によると、令和元年における給与所得者の平均年収は436万円となっています。一方、就職情報サイトの求人ボックスのデータによると、研究職の平均年収は、正社員で523万円となっており、全体平均よりも高い傾向にあります。
■研究職の年収の構成要素
研究職の給料は、基本給や能力給などの固定給と、賞与、各種手当で構成されます。基本給や能力給は、本人の能力や年齢、役職によって変わります。研究で成果を上げるほか、キャリアを積み重ねることで固定給は上がります。
賞与は、所属企業の規模や業績によって異なるものの、一般企業同様に、年2回の支給が多いようです。基本給をベースに計算することが多いので、年齢が上がるほどボーナスも増えていきます。また、多くの企業が、住宅手当や交通費、時間外手当などを支給しており、支給額や支給の条件は各企業で異なります。
このほか研究職は、セミナーやメディアへの出演、書籍の監修などの副業で、収入を得られる場合もあります。所属している企業によっては、副業を禁止しているところがあるものの、業務で得た専門知識やスキルを活かせば、新たな収入源になります。
研究職の年収は業種、雇用形態などで異なる
研究職の年収は、以下の要素や条件で変わります。
■業種による年収の違い
研究職とひと言でいっても、自然科学系研究者や化学技術者、食品系の研究者など、様々な業種があります。厚生労働省の「賃金基本統計」を参考に算出したJobQの試算によると、自然科学系研究者の年収が628万円でトップとなり、自動車技術者436万円、化学技術者428万円、食品技術者が276万円となっています。同じ研究職でも、研究する分野の違いで年収が異なることがわかります。
■役職やキャリアによる年収の違い
研究職も一般企業と同様に、役職や従事している年数によって年収が変わります。一般的に研究職は、研究員から始まり、主任研究員、課長、部長へと昇進するに従って、収入が上がります。また、厚生労働省の「賃金基本統計」でも、1~4年目の研究職の所定内給与額が31.5万円/月で、年間賞与その他特別給与額が105.2万円であるのに対し、キャリアが15年以上になると、所定内給与額が50.8万円、年間賞与が2371.9万円となっています。
■雇用形態による年収の違い
研究職には、正社員のほか、派遣、アルバイト、期間限定雇用などの、様々な雇用形態があります。求人ボックスのデータでは、正社員の平均年収が523万円で、派遣社員の平均時給が1,520円、アルバイト・パートの平均時給が1,007円となっており、雇用形態による収入の違いがわかります。研究職の派遣やアルバイト・パートは、採用条件があまり厳しくなく、経験が少なくても採用されることもあります。子育てや介護などによる、フルタイムで働けない場合には、このような雇用形態を選ぶのもよいでしょう。
■勤務先による年収の違い
研究職の勤務先には、一般企業のほか、大学付属の研究室やセンター、国・地方自治体・公的機関などの産業技術センターなどがあります。企業は、その規模や売上額、業種により年収が異なり、大企業のスキルの高い研究職であれば、年収1,000万円超えも夢ではありません。大学や公的機関では、キャリアアップして職位を上げることが、年収アップにつながります。
研究職中途採用者の年収は?
中途採用の研究職の場合は、どのくらいの年収を期待できるのでしょうか。
■狭き門の研究職中途採用
研究職は、専門性が高い仕事なので、そもそも求人の絶対数が少ないのが特徴です。一方で、人気職であることから希望者が多く、転職がしづらい職種とされています。企業も経験豊富な人材を求めることから、知識やスキルが浅いうちの中途採用は、ハードルが高くなります。
■中途採用者の年収
中途採用の年収は、企業や雇用形態によって異なるものの、既存の社員等と変わりはないようです。ただし、企業が求める専門知識やスキルのある人材であれば、収入増も期待できます。現状よりも収入アップを狙うのであれば、自分のスキルや実績を高く評価してくれる企業などを選ぶとよいでしょう。
■中途採用を実施しているところ
中途採用を行っている主な転職先としては、大手メーカーやベンチャーなどの民間企業のほか、大学の研究室や国・公的機関の研究所などが挙げられます。企業は利益追求がミッションなので、期限内に成果を出すことが求められます。大学の研究室や公的機関の研究所は、将来的に必要な基礎研究を、時間をかけて行っているところが多いので、自分のスキルや適性に合った転職先を選ぶようにしましょう。
研究職の中途採用で年収を上げるポイントは?
研究職で転職する際に、以下のスキルや経歴があると、年収アップを期待できます。
■専門がAI・データサイエンス
研究職の中でも、これから需要増が見込まれているAIやデータサイエンスの分野は、人手不足ということもあって、中途採用でも年収を上げられる可能性が高い職種です。データサイエンティストは、理系の知識だけではなく、データを社会やビジネスに役立てるための広範な知識やビジネスセンスが求められます。その分ニーズが高く、専門性が高いほど、高収入を狙える分野といえます。
■基礎研究か応用研究かどちらかの実績
研究の分野は、将来役立つような新しい基盤となる研究を行う「基礎研究」と、基礎研究の成果を活かして、利益につながる技術や製品をうみ出す「応用研究」に分かれます。前者が大学や研究機関で、後者が民間企業で行われることが多く、自分の知識やスキルが活かせる研究を選ぶことで、実績を評価されて年収増につながることもあります。
■最終学歴が博士了
一般的に修士了と博士了では初任給から異なり、博士了の方が高い収入を期待できます。中途採用でも、博士了で培った知識や研究実績などを評価されることが多いのが現実です。
■語学力
海外に拠点がある企業の研究職は、日常的に海外の研究者や顧客とやり取りを行うので、語学力が高い方が採用されやすく、収入増につながります。企業にとって、高い語学力がある研究者は、海外に関連する幅広い仕事に従事させることができ、海外赴任も任せられることから、高額でも欲しい人材となります。
■海外企業の勤務歴
海外の企業で研究を行っていた実績や経験があると、収入増を期待できます。製薬会社などは、製品開発において外国と競合になることが多く、他国の知見がある人材は重宝されます。
■共同研究の実績
ほかの大学や企業との共同研究の実績などがあると、経験値を評価されて収入アップにつながることもあります。雇用する側が求める同様の研究成果をあげている場合や、他組織とのネットワークやつながりがあると即戦力となり、好条件で雇ってもらえる可能性が高まります。
まとめ
研究職の年収は、全給与所得者の平均よりは高いものの、所属先や雇用形態、役職などによって異なります。中途採用の枠は少なく、人気職ということもあって希望者が多いことから、転職は難しいとされています。転職で年収増を望むなら、ニーズの高い分野を選ぶか、スキルアップ・キャリアアップを心がけるようにしましょう。
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