進化するゲームをAIで支える
「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」など、国民的なゲームタイトルをリリースし続けるスクウェア・エニックス。オンラインやソーシャルといった遊びのカタチ、スマホやPCブラウザなどデバイスも多様化するゲーム業界において、総合的な開発力で存在感を発揮してきた。同社のテクノロジー推進部AI Unitは、現在のゲームに欠かせないAIの研究・開発に取り組んでいる。
AI Unitを統括する三宅陽一郎氏によると、未来のゲームづくりを支えるAIは大きく分けて4タイプあるという。
「ゲーム内のキャラクターの意思決定を司るAI、それらを制御して難易度を調整するメタAI、地形や座標軸を認識してゲーム内の移動を支えるナビゲーションAI。さらに最近活発になってきた、開発工程から取り入れる、デバッグや品質保証に活用されるAI。私たちは4つのAIそれぞれのエキスパートを育成し、ゲーム開発の現場に技術を提供しています」
研究者としてゲーム開発に参画
近年、主要ゲームタイトルはストーリー、世界観が複雑化する大作化の傾向が顕著だ。3〜5年という長期にわたる開発プロジェクトも少なくないという。
「ゲーム開発のかなりの部分がAI技術の開発に費やされるようになってきました。プロジェクトの前半でそのゲームならではの技術を研究し、後半に実装するという流れです。私たちはエンジニアですが、同時にAIの研究者でもあります。開発現場は自分の研究成果を盛り込む場でもあるのです」(三宅氏)
「ファイナルファンタジーXV」に実装したAIに関する論文を専門誌『Game AI Pro』に寄稿するなど、AI研究者集団としても注目を集める。論文が書け、実装もできる、つまりリサーチ&エンジニアリングを両輪で回せる修士、博士クラスの技術者を中心に採用してきた。
「私はナビゲーションAIを研究していますが、ゲームタイトルの開発にかかわることで、新しい技術の知見を研究側に持ってこられるのがゲーム開発の魅力です」(ファビアン氏)
研究とゲームへの実装をスピーディーに回せるダイナミックな環境に惹かれ、多彩な人材が国内外から集まってきた。
「研究成果の評価はゲームを楽しんでくれるユーザーの反応。そんな現場が楽しく、面白いですね」(里井氏)
「ゲームAIの開発を志して入社しました。AIによってキャラクターのきめ細やかな感情を表現できれば」(ゴティエ氏)
開発の現場ではゲームデザイナーがコンテンツをつくり、同部のエンジニアがAIを支えていく。クリエイティブと技術が融合し、まだ見ぬエンターテインメントを生む――それがゲーム開発ならではの苦労でもあり、醍醐味でもあるという。
「デザイナーとともに進めるだけあって、IT企業のシステム開発などと比べたら、スピードは遅いかもしれません。ゲーム開発は芸術と技術の緻密な組み合わせなのです。しかし、自分が開発した技術をゲームタイトルに使い、それが実績になって、研究者として論文が書ける。そんな環境はほかにありません。技術はもちろんですが、エンターテインメントへの思いが根底にあり、とことん開発にこだわれる。そんな方が活躍できる環境です」(三宅氏)
設立/2008年10月1日
代表者/代表取締役社長 松田洋祐
従業員数/2411名(2018年6月末現在)
所在地/東京都新宿区新宿6-27-30新宿イーストサイドスクエア
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