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BK_5【研究部門最前線Vol.19】世界に通用する広告プロダクトをつくる! 研究者、エンジニアの協奏で未来を開拓

世界に通用する広告プロダクトをつくる!
研究者、エンジニアの協奏で未来を開拓

株式会社サイバーエージェント AI Lab

約300名の人員を誇るアドテクスタジオおよびAI Labは、AIを駆使した
広告クリエイティブの自動生成と動画・画像広告の分析技術などの研究を生かしてプロダクト開発に取り組む。
産学連携も推進し、海外を含む8つの大学・研究機関とAI分野で提携している

AIで広告を最適化。世界と戦える技術を

製造業をはじめ、今やあらゆる産業で業務工程へのAI導入が進められている。インターネット広告最大手で、「AbemaTV」などメディア事業も手がけるサイバーエージェントも、AIを駆使した広告クリエイティブに乗り出している。

同社は2013年に、アドテクノロジーのサービス開発強化を目的とした専門部署「アドテクスタジオ」を、16年にはその技術戦略の中核を担うR&D部門として「AI Lab」を立ち上げ、AIによる広告クリエイティブの自動生成技術などの研究に注力。研究体制の強化について、アドテクスタジオを率いる内藤貴仁氏は「強い危機感を抱いたため」と説明する。

「グーグルやアマゾンなど、世界のプラットフォーマーは、従来にない発想で新しい広告モデルを開発し、その広告自動生成技術はすさまじい速度で進化しています。手をこまねいていては、弊社の死活問題に発展しかねません。彼ら、すなわち世界と伍する技術を醸成・確立する必要性があると考えています」

ネット広告の制作工程は非常に複雑だ。そして、技術発達によるデジタル広告配信の精度向上で、ターゲットのパーソナライズやセグメント化の線引きが明確になった。それに伴い、当然として広告表現の細分化が求められているのだ。

「極端なことをいえば、1億人に対する個別ターゲティングができたとしても、各ユーザーに届く広告がすべて同じものになってしまっては意味がありません。より効果の高い広告を届けるためには、クリエイティブ部分の自動化や効率化を進めることが重要です。AI技術を活用してユーザーの嗜好や特性に沿ったクリエイティブ画像などを自動生成し、最適配信を実現する技術の開発が喫緊の課題になっています」

こうした点を踏まえ、AILabでは「対話エージェントの自動対話技術」「広告クリエイティブの制作支援と自動生成」「広告の因果効果の分析」という3つの柱で研究開発を推進。AI技術の実用化に前向きな大学研究室との産学連携も展開し、アンドロイド研究で知られる大阪大学の石黒浩教授の研究室など、複数の大学や研究機関とAI分野で提携。広告配信技術のさらなる向上を目指している。

研究成果がすぐに社会実装される喜び

AI Labには現在、機械学習、画像認識、自然言語処理、計量経済学などを専門とする15名前後の研究職が在籍、そのうち約半数が博士号取得者だ。同ラボの強みについて、内藤氏は次のように説明する。

「何より、ビジネス現場の膨大なリアルデータが利用でき、研究成果の社会実装までの期間が短いこと。弊社ではそれらのデータを活用し研究をすぐに行えます。例えば、チャットボットでクレーム処理ができないか?と考え、〝チャットボットによる話者の怒り抑制技術〞など画期的な研究に取り組んでいますが、そうした技術がすぐに世に問えるのも、ネット広告代理店最大手の弊社の強みでしょう」

これらの点に魅力を感じた、大学助教授からの転身者や政府機関出身者などが在籍している。しかし、まだまだ同社の貪欲な採用ニーズを満たしているとはいえないようだ。

「エンジニアや研究者にとっては、広告会社とAIが結びつくイメージが薄いらしく、就職先としての認知が進んでいません。立ち上げから間もないこともあり、組織的に未熟な部分も残っていますが、逆にいえば、研究環境そのものを自分たちで自由につくっていくことができます。そこをポジティブに捉えていただける、起業家マインドを持った研究者と一緒に未来をつくりたいですね」

上/AI Labの一風景。機械学習、コンピュータビジョン、自然言語処理、HAI/HRIなど分野ごとにチームが編成され、広告を取り巻く様々な課題の定義・解決に取り組んでいる 右下/アドテク本部内の開発横断組織「アドテクスタジオ」のオフィス。リラックスしながら開発に集中できる工夫が施されている 左下/コンピュータビジョンを研究する山口光太氏(左)は、2017年まで東北大学大学院情報科学研究科で助教を務めていた
産学連携を推進するAI Labは、大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授、東急不動産と共同でホテル内におけるAI搭載人型ロボットのコミュニケーション研究などを実施。写真の卓上型ロボット「CommU」「Sota」をホテルエレベータ前などに配置、適切なタイミングで人に声かけや挨拶を行う。次世代の広告開発を目指す

代表取締役CEO
内藤 貴仁

ないとう・たかひと/2001年サイバーエージェント入社。05年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。10年に広告事業の統括本部長を経て、同年、取締役就任。16年、上級執行役員に就任。(株)CYPAR、(株)CaDesign、(株)CAABEJA の代表取締役など兼任。現在は、広告事業のテクノロジー、クリエイティブ、オペレーション事業を統括。18年12月、サイバーエージェント取締役に再び就任。
株式会社サイバーエージェント
設立/1998年3月18日
代表者/代表取締役社長 藤田 晋
従業員数/4988名(連結:2018年9月現在)
所在地/東京都渋谷区道玄坂1-12-1
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