自社独自製品のほか、他社との共同研究も
「全てのモノにDeep Learningの恩恵を」を掲げ、ディープラーニングの社会実装を目指すLeapMind。ディープラーニングを動かすには通常、膨大な量のデータを処理するため一定以上の消費電力やコストを要し、それが普及の妨げになる。そこで同社が着目したのはエッジコンピューティングだ。クラウドコンピューティングがネットを通じて情報を集約、データをまとめて処理するのに対し、エッジコンピューティングはエッジ(端末)側に専用チップを組み込み、ネット接続なしで情報を高速処理する。同社CROの兼村厚範氏は語る。
「例えば、家電にディープラーニングを組み込もうにもGPUをはじめとする従来の技術では電力消費が激しく、ファンがうるさく回ります。それでは使用に耐えられない。社会実装にはエッジの技術が必要不可欠です」
なかでも同社の独自性は、低消費電力で小型の専用チップや、大幅に容量を圧縮したニューラルネットワークなど、ハードとソフトの両面から、エッジコンピューティング環境でディープラーニングを動かす技術を研究開発、そして実装までを手がけるところにある。
現在は、組み込みディープラーニングモデルの開発から導入までに必要な環境一式をプロダクトとした「DeLTA-Family」を提供。学習データの作成を支援する「DeLTA-Mark」、プログラミング不要な組み込みディープラーニングモデル構築ソリューション「DeLTA-Lite」、「DeLTA-Lite」で生成したモデルをハードウェアで評価する「DeLTA-Kit」などを展開する。活用用途は、異物検出、年齢・性別分類、ひび・サビの検出など広範だ。並行して、顧客企業と共同研究によるオリジナルモデルの開発も進める。2018年には、同社のコア技術をオープンソースソフト「Blueoil」として一般公開した。
エンジニアのための組織づくりに注力
米国の調査会社CBインサイツにより「革新的な人工知能技術に取り組んでいる最も有望な100社」に選出されるなど、世界的にも評価が高い同社。社員の出身地も17カ国におよぶ。現在、約90名いる社員のうち6割はエンジニアだ。
「個別に求めるスキルはいろいろありますが、ひとことでいうと企画の段階から言語化・明文化したうえで議論できる人。構想段階から、うまくいくためにはどのようにかたちにしていくかを考えておくことが重要です」
兼村氏自身は、カリフォルニア大や産業技術総合研究所など国内外の研究機関を経てきた。
「転職を決めた理由はいくつかあります。一つは当社の松田CEOが非常に面白い人間であること(笑)。研究機関より大きなことができるだろうとも思いました。技術に国境はありませんから、海外に拠点を持つこともできます。何より、これから拡大していくマーケットのなかで今後の人生を過ごしたい」
同社の職場環境を語るうえで特筆すべきは、エンジニアのための組織づくりを専任で行うエンジニア出身の担当者がいることだ。GoogleやDropboxを経て同社VPof Engineeringに就任した澤田武男氏である。
「彼はエンジニアとしても超優秀なのですが、原則プログラムは書かずに、エンジニアのための組織づくりにフルタイムで当たっているのです。常々エンジニア一人ひとりにフォーカスすることが大事と語り、定期的に面談を行いつつ学習機会の提供やプロジェクトアサインの変更など彼らの成長を後押しする手を打っています。彼はキャリアグロース支援を会社の強みにしたいと言っています。社員がハッピーなら会社もハッピーになる。そんな環境をつくりたいと」 今後の目標を尋ねた。
「CEO、CTO、COOと立場ごとに異なる考えがあると思いますが、私の立場からは、一流の研究を積み重ね、成果を出せる組織にしたい。その意欲とポテンシャルのある方にぜひ、来ていただきたいです」
兼村厚範
かねむら・あつのり/2009年、京都大学大学院情報学研究科修了、博士(情報学)。大学や産総研を経て2018年7月にLeapMind株式会社にChief Research Officer & Chief Scientistとしてジョイン。ヒトを取り巻く様々なデータを知的に解析し、ヒトを支援する技術の研究開発を推進。産総研招聘研究員、ATR客員研究員などを併任。日本神経回路学会論文賞など受賞多数。
設立/2012年12月25日
代表者/代表取締役CEO
松田総一
従業員数/約90名
( 2019年3月末現在)
所在地/東京都渋谷区円山
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