カスタムAIで産業に新たな姿を!
同社は、外資系コンサルティングファームで数多くの実績を積んだ椎橋徹夫氏(CEO)と、機械学習の研究者で博士の学位を持つ藤原弘将氏(CTO)が2016年に立ち上げたAIベンチャーである。
現在、機械学習・深層学習を使って予測や認識などを行う取り組みが様々な業界で進んでいる。AIを取り入れたERP(統合基幹業務システム)など売り切り型のパッケージAIも登場しているが、同社の特徴は、業務効率化を主眼に置いた間接部門の支援ではなく、顧客企業のコア事業に完全にマッチさせた、オーダーメイドによるAIソリューションを開発・提供していること。椎橋氏は「企業の〝コアビジネスの変革〞を支援するパートナーでありたい」と話す。
「コアビジネスの変革とは、それぞれの企業が持つ独自の強みや優位性をさらに強化・拡充させることを意味し、AIが本来の力を発揮すべき分野です。目指しているのは、顧客のビジネスとAI技術を橋渡しする存在として、カスタマイズ型のソリューションを提供すること。あらゆる業界・ビジネスへのAIの実用化を推進してイノベーションを起こすこと。AIプロダクトをつくっている企業は無数にありますが、弊社はカスタムメイドのAI提供にこだわることで、企業の競争力強化に貢献したいと考えています」
他国に比べ、日本企業はAI導入が遅れているイメージがあるが、藤原氏は否定する。
「いわゆる〝GAFA〞などのインターネット企業がサービスにAIを導入し、かつAI分野に莫大な投資をしていることからそう捉えられがちですが、トラディショナルな産業、例えば製造業や農林水産業などでは、日本もアメリカも、AI導入の状況は似たり寄ったりです」椎橋氏も強調する。
「AIによる既存産業の変革という点でいえば、どの国も大差なく、本当の勝負はこれから始まるという印象を持っています。ITなどの新興産業ではなく、昔から存在し、社会に不可欠な既存産業を大きく変えたり進化させたりすることこそ、AIがもたらすべき本来の役割でありインパクト。弊社の使命は、そのお手伝いをすることです」
技術を世に出し、ビジネスとつなぐ
同社で中心となるキャリアは、大きく分けて「機械学習エンジニア」と「ソリューションデザイナ」の2つがある。
「機械学習エンジニアは、アカデミア分野の最先端の機械学習技術や知見を収集して実用化する〝技術を世に出す〞役割を担い、ソリューションデザイナは、顧客ビジネスの高い理解力をベースに、機械学習やAIの技術とビジネスをつなぐエキスパートです」(椎橋氏)
どちらも〝技術〞〝ビジネス〞に関する高いレベルの知見を要求されるが、当初からこの2つの領域をカバーしている人材は少ない。そのため同社では、お互いがタッグを組んで補完し合い、プロジェクトベースで仕事を進めている。
「〝技術〞と〝ビジネス〞をつなぐ知見やノウハウは、一朝一夕には培えませんから、プロジェクトを通じてそれらを社内にストックし、体系化する取り組みを進めています。そのブラッシュアップを重ね、私たちが提供したいサービスやソリューションをより高いレベルで具現化できるプロフェッショナル集団として成長し続けることで、社会の変革に資する存在になることが願いです」(藤原氏)
藤原弘将
ふじはら・ひろまさ/大学院修士課程修了後、2007年に産業技術総合研究所情報技術研究部門に入所。在職中に京都大学大学院博士課程で博士(情報学)を取得。11年~12年の間、在外研究員としてQueen Mary Universityof London客員研究員を兼任。12年、ボストンコンサルティンググループに入社。その後、AI系のスタートアップ企業を経て、16年、株式会社Laboro.AIを創業。
椎橋徹夫
しいはし・てつお/米国州立テキサス大学理学部物理学・数学二重専攻卒業後帰国し、2008年にボストンコンサルティンググループ東京オフィスに参画。14年、当時最年少でプリンシパルに昇進。同年、東京大学の松尾豊研究室の寄付講座ディレクターを兼任。研究室における産学連携の取り組み・データサイエンス領域の教育・企業連携の仕組みづくりに従事。16年、株式会社Laboro.AIを創業。
設立/2016年4月1日
従業員数/20名(2019年5月末現在)
所在地/東京都中央区銀座8-11-1GINZA GS BLD.2 3階
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