ホワイトカラーの生産性向上に貢献
人工知能ブームに沸く近年の産業界だが、人工知能の精度やビジネス上の実用性にはまだ不透明なところがある。「自分たちのビジネスにどう生かせるか」確たる解答を見いだせない企業も多い。そんななか、利用目的を明らかにしながら、APIで「すぐに使える」学習済みの人工知能を提供しているのが、メタデータ株式会社だ。
同社の代表はAI研究の第一人者として知られる野村直之氏。2005年の創業以来、様々なソフトウェアを手がけてきたが、野村氏の理念は一貫している。
「ホワイトカラーのクリエイティビティを引き出し、知的生産性を向上させるソフトウェアを独自開発して提供したい。世の中には、人間をスポイルするソフトが溢れていますから」
同社が提供する代表的なソフトウェアを3つ挙げよう。「AIポジショニングマップ」は、顧客の声やソーシャルメディア上の投稿、自由記述のアンケートなど、あらゆるテキストデータを人工知能が自動的に分類、意味抽出や仮説発見を行うもの。
ここから業界内における自社の位置を示すポジショニングマップなどを自動生成することが可能だ。無数の「顧客の声」から本当に意義のある声を探し出せるのも特筆すべき点。これが経営戦略を左右するほどの大きな発見をもたらす。
「某百貨店を対象にした分析からは『誕生日ぐらい○○百貨店に連れてってよ』という強烈な一言を探し出しました。たったの一言でも、数十万人のサイレントマジョリティの声を代弁していることが読み取れる。この高いブランドイメージに応えるため、その百貨店は安売りキャンペーンを中止しました」
「xTech」は人材×会社、商品と買い手など多対多の超高速マッチングエンジン。人材の適性配置が一つの用途だ。仮に派遣人材10人と派遣先10社の最適なマッチングを従来の手法が1秒でこなす時、1000人×1000社だと11.6日、10万人×10万社では3万1710年を要することになり、マッチングは事実上不可能。だがxTechは、この計算をわずか6.8秒でこなすという。
同社はまた画像認識の人工知能も販売している。これを手軽に体験できる無料サービスが「この猫なに猫?」だ。入力した任意の画像から世界の猫約60種類のどれに似ているかを言い当てる。この画像認識技術は極めて応用範囲が広く、現在同社は厚生労働省からの補助金を得て「稀少がん」の病理診断ツールの開発を急いでいる。
1カ月あれば学生も一人前に育つ環境
同社に所属するメンバーは25名ほど。東大を中心とした大学院生5名、学部生20名を雇用する。最年少は18歳だが全員を一人前として扱う。それまでAIと無縁だった学生でも、早ければ1週間、遅くとも1カ月あれば出荷可能なソフトウェアを開発できるよう育てるという。
「彼らはものづくりがしたくてここにやってきます。たとえ東大といえども学部教育は受け身で、プログラミングもほとんど教えない。しかし本来、人間の脳は徹頭徹尾アウトプット型です。アウトプットしようとしない限り知識は身につかず、アメリカの大学のような若き天才が出てこないのです」
同社の環境と肌が合う学生であれば、「水を得た魚のように暴れ回る」。個別の力量差はあるものの、野村氏が一人ひとりに適正なレベルのミッションを割り当てることで成長を促す。こうして育っていくのは人工知能の先鋭集団。卒業後は各界に散らばり傑出したパフォーマンスを発揮しているという。「入社1カ月で某大企業の新規事業を任された人間もいるぐらいです」。
直近の目標に「4年以内に史上最少人数で上場すること」を掲げる同社。APIはシステムの心臓部であり、原理的には最もレバレッジが効いたビジネスができると野村氏は期待する。
「永続的によいソフトを提供し続ける体制を整えていきます」
のむら・なおゆき/1984年、東京大学工学部計数工学科卒業。NECC&C研究所入社。マサチューセッツ工科大人工知能研究所客員研究員(93~94年)。その後、ジャストシステム、法政大学大学院ITPC兼任講師、リコーソフトウェア研究開発本部・課長研究員などを経て、2005年にメタデータ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。博士(理学)。
設立/2005年12月
代表者/代表取締役社長 野村直之
従業員数/25名(2016年12月末現在)
所在地/東京都文京区本郷3-25-4 津久井21ビル4階
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